<Header>
<Author: 劉希夷>
<Title: 公子行>
<Format: 格式不明>
<Year: 1964>
<BookName: 唐詩選　上>
<Translator: 斎藤晌>
<style: 現代文無假名>
<style2: 日本現代譯文無假名標注>
<TranslatedTitle: 公子行>
<BookPage: 69>
<UsedPage: 1>
<Feature: 1, 4>
<End Header>
<Poem>
天津橋下陽春水，
天津橋上繁華子。
馬聲迴合青雲外，
人影動搖綠波裏。
綠波蕩漾玉爲砂，
青雲離披錦作霞。
可憐楊柳傷心樹，
可憐桃李斷腸花。
此日遨遊邀美女，
此時歌舞入娼家。
娼家美女鬱金香，
飛來飛去公子傍。
的的珠簾白日映，
娥娥玉顏紅粉妝。
花際裴回雙蛺蝶，
池邊顧步兩鴛鴦。
傾國傾城漢武帝，
爲雲爲雨楚襄王。
古來容光人所羨，
況復今日遙相見。
願作輕羅著細腰，
願爲明鏡分嬌面。
與君相向轉相親，
與君雙棲共一身。
願作貞松千歲古，
誰論芳槿一朝新。
百年同謝西山日，
千秋萬古北邙塵。
<End Poem>
<Translation>
天津橋の下には、みなぎり流れる春の水。天津橋の上には今をときめく若い貴公子の姿。彼の乘った馬のいななきは晴れた空高くひびきわたり、橋の上を通る人かげは下の綠の波にうつ ってゆれ動いている。綠の波は、どこまでも澄んで透きとおり、河底の砂が玉をしいたよう。晴れた空いっぱいに千切れ雲がちらばって、鍛のように多彩に照りはえている。愛らしい、あの新芽を吹いたやなぎは人の心をいたましめる、やるせない木よ。 愛らしいあの桃や李は人の腸をたちきるばかりなやましい花よ。この日の遊興に美女をまねいたのも、げにやとうなずかれる。そしてこのとき、いよいよ歌舞にうち興ずるため遊女の家へくりこんだ。青樓の美女が身のこなしに薰きこめた香をただよわせながら、公子のかたわらを、ひょいとはなれたり、ひょいと近よってきたりする、思わせぶり。あかるい朱塗りの簾は、日の光に照りはえ、あでやかな玉の顔は白粉と臙脂のよそおいに輝いている。ごらん、ひらひらと花にたわむれて飛ぶ二ひきの蝶。しずしずと見返りながら池のほとりを竝んで步む一番のおしどり。やがては二人のむつびあう心のすがたではあるまいが。昔、漢の武帝は、あまりの美しさに城を傾け國を傾けるほど危險な魅力を持ち主と謳われた李夫人を手に入れられた。さらにその昔には、楚の襄王と申されるお方は、高唐の離宮に遊んで夢に一人の女性と逢われて深い契りをむすばれたが、別れぎわに「じつはわたしは巫山の神女で、これから朝は曙をたちこめる雲となり、暮には夕立の降りそそぐ雨となってお目にかかりましょう」といったという。「昔から美しい姿かたちは物語のなかでさえ人の慕うもの。ましてや今日、こんなほんものにお目にかかれよぅとはね。このうえのお願いは、薄絹になってその細い腰にまといつきたいよ。曇りのない、きれいな鏡になって、そのかわいい顔うつしていたいよ」(これぞ貴公子が美女をくどくことばであった。) 「あなたとさし向かいでいると、だんだん仲よしになってしまいました。このうえは、あなたといっしょになって、いつまでもお側にいてくらしたいわ。どうか千年も色のかわらない老松のように、操ただしく堅氣にくらすのよ。むくげの花のただ一朝の新しさのような浮いた話は、あたしいやなのよ。百年の壽命が盡きたら、西の山に沈むお日さまのように、お互いにきれいさっぱりこの世におさらばいたしましょう。そして千年も萬年も北邙山の墓地で、ごいっしょに塵となり土となったら本望じゃご ざいませんか」(美女は貴公子のことばに答えていった。)
<End Translation>
<Formatted Translation>
天津橋の下には、みなぎり流れる春の水。
天津橋の上には今をときめく若い貴公子の姿。
彼の乘った馬のいななきは晴れた空高くひびきわたり、
橋の上を通る人かげは下の綠の波にうつ ってゆれ動いている。
綠の波は、どこまでも澄んで透きとおり、河底の砂が玉をしいたよう。
晴れた空いっぱいに千切れ雲がちらばって、鍛のように多彩に照りはえている。
愛らしい、あの新芽を吹いたやなぎは人の心をいたましめる、やるせない木よ。 
愛らしいあの桃や李は人の腸をたちきるばかりなやましい花よ。この日の遊興に美女をまねいたのも、げにやとうなずかれる。
そしてこのとき、いよいよ歌舞にうち興ずるため遊女の家へくりこんだ。
青樓の美女が身のこなしに薰きこめた香をただよわせながら、
公子のかたわらを、ひょいとはなれたり、ひょいと近よってきたりする、思わせぶり。
あかるい朱塗りの簾は、日の光に照りはえ、あでやかな玉の顔は白粉と臙脂のよそおいに輝いている。
ごらん、ひらひらと花にたわむれて飛ぶ二ひきの蝶。
しずしずと見返りながら池のほとりを竝んで步む一番のおしどり。やがては二人のむつびあう心のすがたではあるまいが。
昔、漢の武帝は、あまりの美しさに城を傾け國を傾けるほど危險な魅力を持ち主と謳われた李夫人を手に入れられた。
さらにその昔には、楚の襄王と申されるお方は、高唐の離宮に遊んで夢に一人の女性と逢われて深い契りをむすばれたが、別れぎわに「じつはわたしは巫山の神女で、これから朝は曙をたちこめる雲となり、暮には夕立の降りそそぐ雨となってお目にかかりましょう」といったという。
「昔から美しい姿かたちは物語のなかでさえ人の慕うもの。
ましてや今日、こんなほんものにお目にかかれよぅとはね。
このうえのお願いは、薄絹になってその細い腰にまといつきたいよ。
曇りのない、きれいな鏡になって、そのかわいい顔うつしていたいよ」(これぞ貴公子が美女をくどくことばであった。) 
「あなたとさし向かいでいると、だんだん仲よしになってしまいました。
このうえは、あなたといっしょになって、いつまでもお側にいてくらしたいわ。
どうか千年も色のかわらない老松のように、操ただしく堅氣にくらすのよ。
むくげの花のただ一朝の新しさのような浮いた話は、あたしいやなのよ。
百年の壽命が盡きたら、西の山に沈むお日さまのように、お互いにきれいさっぱりこの世におさらばいたしましょう。
そして千年も萬年も北邙山の墓地で、ごいっしょに塵となり土となったら本望じゃご ざいませんか」(美女は貴公子のことばに答えていった。)
<End Formatted Translation>